手掌多汗症に対する胸腔鏡下胸部交感神経節切除術(ETS)について
手のひらなどに非常に沢山の汗をかくため、握手ができない、
大事な書類を濡らしたり、汚したりして困るなど悩んでいる人がたくさんおられます。
このような疾患を「多汗症」や「手掌多汗症」といいますが、良性疾患(治療をしなくても生命に直接的影響を
与えない病気)であるため、放置されてきている患者さん達も少なくありませんでした。
多汗症は自律神経のひとつである交感神経が過度に緊張することが原因です。そこで従来は胸部交感神経節アルコール
ブロックでこの疾患の治療を行ってきました。
しかしX線透視下に行なう胸部交感神経節アルコールブロックは放射線被曝の問題だけでなく、
ブロック針での肺穿刺による気胸発生や使用するアルコールによる種々の神経障害が生じる可能性があり、手術を
行う側にとっても、ストレスのかかるな神経ブロックの一つでした。
最近内視鏡を用いる手術は、光学システムや周辺機器の開発・改良が進められたことによってめざましい進歩が
見られます。そのため、多くの診療科で様々な手術に応用されてきています。
私もこれまで胸部交感神経アルコールブロックを行っていた多汗症の治療に1993年から現在までに412人の患者さんに
「胸腔鏡下胸部交感神経節切除術(ETS)」を行って、100%の発汗を止める
ことができ、多くの患者さんに、「積極的な行動がとれるようになった」、「仕事の能率が上がるようになった」、
「生まれ変わったみたい」等々と喜ばれています。
この症例数は、日本における個人の手術経験数としては1,2番目と思われます。
多汗症に対するETSはいくつかの施設で行われています。私は手術経験を重ねながら、
安全で確実な独自の手術法を考案して手術を行っています。その方法は
直径わずか3mmの小さい穴を胸の横に2つあけ、1つの穴から、体の中を映し出すための胸腔鏡を入れ、もう一つの
穴から、手術を行うレーザーメスを入れます。
多汗症の治療は両側の胸部交感神経切除を行いますので、全部で4つの小さい穴をあけることになります。この穴の
大きさは他の施設で行われているものに比べ非常に小さいため、手術後に縫合する必要もありません。そのため、
手術の傷跡はほとんど目立ちません。多汗症で悩んでいる患者さんには若い女性の方が大変多くおられますが、
傷跡が残らないことは大変大きなメリットです。
手術は片側約10分、両側を完了するまでに20分以内にすべての治療が終わります。
短時間で終了できるということは、手術侵襲が小さいということでもあり、そのことは手術後の合併症の発生も
少ないということになります。
手術は全身麻酔で、次の手順で行います。
- 麻酔---麻酔は全身麻酔で行いますので、麻酔中の意識はありません。
- ポート(胸腔鏡やレーザーメスを挿入するための穴)の準備---トロカールと呼ばれる器具を用いて
身体の側面に穴をあけます。
その穴の大きさは直径わずか3mmです。胸腔鏡用とレーザーメス用の2つ準備します。
- 1つのポートから胸腔鏡を挿入し、それをビデオモニタに接続し、胸の中の映像を試写し、明るさなどを
調節します。
- モニター画面で切除する交感神経を確認し、もう1つのポートから挿入したレーザーメスで切除(凝固
蒸散)を行います。
他の施設で使用されている電気メスではなくレーザーを用いるので、交感神経とそばを通る血管や肋間神経
などを傷つけることなく、周囲組織へのダメージが最小限で済むメリットがあります。
- 胸腔鏡とレーザーメスを抜き取り、さらにトロカールも抜き取ります。
- 消毒のための薬を塗り、その上から小さいテープ(サージカルテープ)を貼ります。傷口は縫いません。
縫合をしないので、抜糸の必要もなく、傷跡も最小限で済みます。
これで、片側の手術は完了です。この間わずか5〜10分です。そのまま続けて、反対側の手術を同じ手順で行います。
手術をご希望の方へ
この手術は毎週木曜日に行っています。
入院から退院までのスケジュールは概ね次の通りです。
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入院
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術前検査
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術前説明
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手術
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退院(注2)
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備考
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手術当日の午前9〜10時
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手術当日の午前中
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手術当日の13時から
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13時30分から
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土曜日
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手術当日の夕方および退院時に胸部レントゲン撮影
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(注1):手術後の家族の付き添いは必要ありません。
手術当日の夕刻よりトイレ歩行が可能になります。
手術風景
患者さんのプライバシーの保護のため写真は全て修正してあります。
この治療についてさらに詳しい説明が必要な方はメールでどうぞ。
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